事実婚と法律婚~価値観の多様化といえども~
近年、多様化する価値観に伴い、色々な結婚の在り方が出てきています。典型的なのはLGBTの方たちのパートナーシップでしょう。
法律上、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」するとされており(民法739)、この条文からすると、両性の合意が必要なのでLGBTの方たちは法律上の婚姻をすることができません。もっとも、近年の価値観の多様化に伴い、思想・信条の自由や、平等権の問題から、各地方公共団体が独自にパートナーシップ制度等を定め、その事実上の婚姻についても保護しようとしているのが実態です。
もちろん、異性同士であっても、法律上の婚姻を選択せず、事実婚を選択されるご夫婦もいらっしゃいます。
今回のご相談者の方は、まさにそういった婚姻関係の下、お子様もいらっしゃいましたが、配偶者の方の不倫について訴訟提起をされたい、というご要望でした。
理論上、法律婚ではない事実婚であったとしても、慰謝料請求は認められる可能性はあります。
そのため、私は、配偶者と不倫相手に対して、共同不法行為(民法719条)に基づく損害賠償請求を提起することにしました。
もちろん、共同不法行為責任の追及ですので、当方において、
① 故意または過失による行為であり
② 当該行為に違法性が認められ
③ 当方に損害が発生しており
④ 行為と③の損害に相当因果関係が認められる
ことを主張・立証する必要があります(立証責任は当方にあります)。
私としては、依頼者と配偶者との間に子供がおり、同居もしていたことから事実婚としての主張は十分であり、裁判例からしてもこの主張は十分に妥当なものと考えて、提訴の上、期日に臨みました。
先方からの主張は、①そもそも法律婚ではない、②同居といっても度々不倫相手の家に外泊していたし、住民票も同居していたマンションには移していない、③不動産も共有などではない、として、事実婚ではない(少なくとも法律上の保護には値しない)ので、不倫に違法性がない、というものでした。
感覚的には、こちらが勝てると思って臨んだ期日だったのですが、裁判官は、同居の実態に関する証拠が少なく、住民票を移動していないことを重視し、今回の関係性では被告らの主張に理があるとのスタンスでした。
もちろん、反論書面は提出いたしましたが、最後までそのスタンス(心証)が覆ることはなく、少額での和解に応じざるを得ませんでした。
これだけ価値観が多様化している現代においてもなお、法律婚か事実婚かでこれだけの違いがあるのか…と思い知らされた事件でした。
たかだか紙切れ1枚を役所に提出しているか否かの差なんだけどなぁ…とモヤモヤが非常に残り、今後の、こういった事件ではより慎重な見立てが必要だと感じました。