被害者のいない犯罪の弁護方針
以前、色々と刑事事件の示談に関する記事を書かせていただいたと思います。
今回の依頼はいわゆる被害者のいない犯罪についての刑事弁護のご依頼でした。
刑事事件には基本的には被害者の方がいらっしゃいます。典型例でいえば、窃盗事件や殺人事件が分かりやすい例と言えるでしょう。地方だと裁判員裁判であろうと、そうでなかろうと、名簿が一緒なので、当番弁護で裁判員裁判が回ってくることもありますが、大都市圏ですと、名簿が別です。私は裁判員裁判の名簿を登録していないので、裁判員裁判は修習時代に見たことくらいしかなく、殺人事件は担当したことはありませんが…
話を本題に戻します。(殺人事件だとちょっと複雑なので窃盗事件で説明しますが)窃盗事件であれば、被害者はもちろん、盗まれた人、ということになります。コンビニの万引きなどであれば、弁護人は必要に応じて被害弁償や謝意を含めた示談などを交渉し、何とか不起訴にもっていくことが使命となるでしょう。もちろん、被疑者の意向や資力等にも大きく左右はされますが、まさに弁護人としての腕の見せ所(表現は的確ではないかもしれませんが…)です。
さて今回話題にする「被害者のいない犯罪」というのは、典型的には覚醒剤取締法違反や麻薬取締法違反などが該当します。
覚せい剤や麻薬は依存性が非常に強く、脳への悪影響(妄想等)も懸念され、これによって凶悪犯罪を引き起こすことにつながりかねないため、使用が禁止されています。
しかし、単に覚せい剤を使用しただけだと、使用した本人への悪影響は否定できず、将来的な被害者を生んでしまう可能性はあるものの、その時点では被害者が存在しない(強いて言えば被疑者自身)ということになります。
これが「被害者のいない犯罪」です。
さて、このような場合の弁護の方針は基本的には情状弁護になります。「反省しています」「もう二度と手を染めません」といった反省文等を提出し、今回だけは勘弁してくださいといった主張で何とか執行猶予を得ようとする作戦です(既に前科があったりするとこれすらも難しい、ということになってしまいますが…)。
以前、一度だけ被疑者の勤務先の社長が「勤務先でしっかり面倒を見ます!」と証言してれたと言うレアケースはありましたが。
本件も前科なし、使用も認めている、ということで情状弁護位しかできることがない事案でした。まだ年齢も若かったので、更生の可能性があるのではないか、ということとお父様を情状証人として出廷してもらい、何とか執行猶予を得ることはできました。
弁護費用をもらっているので当然の仕事ではありますが、被害者のいない犯罪については、正直、どの弁護士がやってもあまり方針等に差異が見出しにくく、国選弁護人を付ける要件を満たしているのであれば、私選弁護人でなくても…と思った案件でした。