出せる証拠は適切なタイミングで~時機に遅れた攻撃防御方法とは~
先日、知り合いの弁護士から「一審で判決が出て負けてしまった。」「高等裁判所での審理(控訴審)から手伝ってもらえないか。」という相談を受けました。
知り合いの弁護士に頼られるというのは、弁護士としては気分はいいのですが、一審で負けているとなると、控訴審で一発目に提出する控訴理由書を相当気合いを入れて書かなければなりませんので簡単ではありません。
控訴理由書の作成に当たっては、一審で既に提出されている準備書面のほか、証拠・陣も調書を確認し、依頼者との打ち合わせで控訴審での方針の説明、及び出していただきたい証拠についての説明をしたうえで、資料の提供を受けて検討し、控訴理由書を作成する必要があります。そして、この作業については、
判決⇒(2週間以内)控訴⇒(50日以内)控訴理由書提出
というタイトなスケジュールでこなさなめればならないのです。同じようにタイトなスケジュールでこなさなければならないものとしては労働審判を使用者側で起こされた時の答弁書があります(この点については、いずれ触れようと思います)。
ご依頼いただいた件に関しては、私なりに精いっぱいの控訴理由書を作成し、何とか期限までに提出を完了することができました。
そして、控訴審においてよくあることではあるのですが、和解勧試がなされることになりました。
残念ながら、控訴審の裁判体(控訴した場合、必ず、裁判官3名の合議体で判断されることになります。これは刑事事件・民事事件共に同じシステムです。なお、第一審から合議体での判断になるかどうかは、事件の内容によるようですが、正直、判断基準はよくわかりません)でも、第一審の判断とは大きく異ならず、損害額についてのみ、若干少なくなるという心証が開示され、その心証を前提に和解協議が進められていました。
ところが、依頼者の方から損害の前提となる資料(具体的には不動産鑑定)について、従前の主張と異なるものがある、という話がこの段階で出てきました(ひょっとすると誰かがそそのかしたのかもしれません)。
もちろん、その資料を拝見し、急いでその資料に基づく主張を組み立て、高等裁判所に提出しました。ところが被控訴人側からは当該主張、及び証拠について時期に遅れた攻撃防御方法に当たるとの主張がなされました。
この主張は、つまるところ、審理がかなり進んだ段階において、今更その根底を覆すような主張や証拠の提出は、審理を徒に遅延させるものであるから許されない、というものです。
まぁ、いわれてしまうとその通りなのです。そもそも何で一審で提出されていないのかも不明ですし、今更そこについて審理するのか、と言いたくなるのも理解できます。
結論としては、裁判所はこれらの主張・証拠を時機に遅れたものとして却下し、判決になってしまいました。
証拠は重要ではありますが、いつでも提出できるものではありません。
弁護士から「こういう証拠はないですか?」といった質問があった場合には、適宜のタイミングで共有いただかないと、こういった結果になることもあります。
控訴審からだったので難しかった案件ではありましたが、十分自戒に値する事件だなと思った次第です。