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弁護士コル先生のコラム

弁護士コル先生の『ためなる』コラム ~その85~

公開: 2024年9月13日 執筆:弁護士コル先生 サイト構築:yafuoo 元記事
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紀州のドン・ファン事件の公判報道を踏まえ、状況証拠や裁判員裁判の仕組みを慎重に検討している法律相談の場面

紀州のドン・ファン殺人事件の第1回公判の記事を読んだ雑感


公判報道や状況証拠の整理資料を見ながら、裁判員裁判での判断の難しさを整理している様子を表した挿絵いよいよ、紀州のドン・ファンこと故・野崎幸助さんの死に関する須藤早貴被告人(被告と報道されますが、刑事事件ではあくまで「被告人」です。詳しくは以前の記事をご参照ください。)の裁判員裁判が始まりました。

刑事事件については、別の記事でもご紹介したように、まずは推定無罪の原則が働きます。そのため、被告人を有罪にするための立証責任は検察官側にあります

さらに、今回は起訴された事実が殺人罪であるため、裁判員裁判となります。もちろん、裁判員は選ばれるにあたって、裁判官から推定無罪の原則についてもしっかりと説明を受けます。しかし、職業裁判官よりもニュース報道などの影響を受けやすい点は否定できないでしょう(そのため、裁判員裁判においても裁判官の少なくとも1人の賛成がなければ、結論は決定できない仕組みになっています)。

今回の事件においては、確かに状況証拠(被告人が覚せい剤を購入していること、被害者の死亡推定時刻には被害者と被告人しか自宅にいなかったこと、被告人がスマホで色々と被害者殺害につながり得るような検索を行っていたこと)や被告人の属性(別事件で有罪判決を受けていること)からすれば、被告人が怪しいのは一目瞭然です。

しかし、殺人事件で有罪にするためには、あくまで被告人が何らかの方法で今回の場合は覚せい剤を殺意を以て過剰摂取させたことを検察側が立証しなければなりません。

このハードルが低くない、ということを弁護側は冒頭裁判員に呼びかけた、ということなのでしょう。

裁判員裁判ではよく、パワーポイント等を用いて双方が分かりやすく双方のストーリーを主張します。 この時、検察官は、今回で言えば被告人がどのように、殺意を以て被疑者に覚せい剤を過剰摂取させたのか具体的に明らかにしなければなりません(消去法で被告人が怪しい!というだけでは足りません)。 これに対し、弁護人側は、あくまで検察官のストーリーにアナザストーリーが成立する、というレベルのストーリーを証拠から組み立てるだけで足ります。

このように、刑事事件の場合には推定無罪の原則が働くがゆえに、検察官側のストーリーが重要です。 今回の事件と類似した事件として和歌山毒物カレー事件があげられているようですが、あれは、ヒ素をカレーに混入させたのは誰か、という問題であり、少し争点が違うような気がします。

今回はそもそも被害者がどのように覚せい剤を摂取したのかすら不明というのが検察官側には難しいところではないでしょうか。

報道によればこの裁判では28人の尋問を予定しているとのことです。 一体検察側はどういったストーリーを証拠に基づいて組み立てるのか、非常に興味深いところです。

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